突然、声が出なくなったり、ひどい声がれに悩まされたりした時、その原因は一つではありません。適切な対処をするためには、どのような病気の可能性があるのか、そして、どこに相談すれば良いのかを知っておくことが大切です。ここでは、声が出なくなる主な原因と、それぞれに対応する診療科について、改めて整理してみましょう。まず、最も一般的な原因は、風邪のウイルスなどが原因で声帯が炎症を起こす「急性声帯炎」です。喉の痛みや咳を伴うことが多く、この場合は、声の専門家である「耳鼻咽喉科」を受診するのが第一選択です。声の安静を保ち、炎症を抑える治療を行います。次に、声を日常的に酷使する人に多いのが、「声帯ポリープ」や「声帯結節」です。声帯に、血豆やペンダコのような「できもの」ができてしまい、慢性的な声がれを引き起こします。これも、診断と治療は「耳鼻咽喉科」が専門となります。声の安静や音声治療、場合によっては手術が必要です。また、見逃してはならないのが、「反回神経麻痺」です。声帯を動かす神経が麻痺し、声がかすれたり、むせやすくなったりします。甲状腺がんや肺がんといった、他の病気が原因である可能性もあるため、まずは「耳鼻咽喉科」で声帯の動きを確認してもらい、その後、原因を調べるために、CT検査などを行うことになります。さらに、強い精神的ストレスが引き金となって、声が出なくなる「心因性失声症」というケースもあります。この場合も、まずは「耳鼻咽喉科」で、声帯に器質的な異常がないことを確認することが大前提です。その上で、原因が心因的なものと強く疑われる場合には、「心療内科」や「精神科」といった、心の専門家と連携して治療を進めていくことになります。その他にも、非常に稀ですが、声帯自体にがんができる「喉頭がん」も、初期症状として声がれが現れることがあります。特に、喫煙歴の長い方で、声がれが何週間も続く場合は、必ず「耳鼻咽喉科」で詳しい検査を受ける必要があります。このように、声が出ないという一つの症状の裏には、様々な病気が隠れています。自己判断で放置せず、まずは声帯を直接診ることができる、耳鼻咽喉科の扉を叩くことが、正しい診断と治療への最も確実な道筋なのです。