足の指の間がかゆい、土踏まずに小さな水ぶくれができた、かかとが硬くなってひび割れてきた。これらの症状に気づくと、多くの人は「水虫になってしまった」と、短絡的に考えてしまいがちです。しかし、足の裏に現れる皮膚トラブルは、水虫(足白癬)だけではありません。水虫と非常によく似た症状を示す、別の皮膚病がいくつも存在し、それらを正確に見分けることは、専門家でなければ非常に困難です。例えば、夏場に多く見られるのが、「汗疱(かんぽう)」または「異汗性湿疹(いかんせいしっしん)」です。これは、汗の排出がうまくいかなくなることが一因とされ、主に足の裏や指の側面に、かゆみを伴う小さな水ぶくれが多数現れます。水ぶくれが破れると、皮がむけてくるため、水虫の水疱型や趾間型と、見た目がそっくりになることがあります。次に、何らかの物質に触れることでアレルギー反応が起こる、「接触皮膚炎(かぶれ)」も、水虫と間違われやすい病気です。靴の素材や、染料、あるいは靴下に使われている化学繊維などが原因となり、赤み、かゆみ、水ぶくれ、皮むけといった症状を引き起こします。原因物質に触れている部分に、症状が限局するのが特徴です。また、手のひらや足の裏に、膿の入った小さな水ぶくれ(膿疱)が、次々と現れる「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」という病気もあります。これは、金属アレルギーや、喫煙などが関与しているとされる、免疫系の異常による病気で、水虫と間違われることがあります。これらの病気は、原因が白癬菌ではないため、当然、水虫薬を塗っても治りません。治療法は、それぞれ全く異なり、汗疱や接触皮膚炎であればステロイド外用薬、掌蹠膿疱症であれば、ビタミンD3軟膏や、より専門的な治療が必要となります。症状だけで自己判断するのは、非常に危険です。足の皮膚に異常を感じたら、まずは皮膚科を受診し、顕微鏡検査などによる、科学的な根拠に基づいた診断を受けることが、何よりも大切なのです。