私は58歳のサラリーマンです。数ヶ月前から、通勤途中、駅の階段を急いで上ると、胸の中央あたりに、ぐーっと圧迫されるような、何とも言えない息苦しさを感じるようになりました。最初は、「歳のせいか、体力が落ちたな」くらいにしか考えていませんでした。その圧迫感も、ホームに着いて一息つくと、2、3分で自然に消えてしまうので、あまり深刻には捉えていなかったのです。しかし、ある朝、取引先へ向かうために早歩きをしていた時、これまでよりも強い胸の圧迫感と共に、左の肩から腕にかけて、じーんとしびれるような痛みが走りました。さすがに「これは、ただごとではないかもしれない」と、私の心に不安がよぎりました。その日の午後、私は意を決して、会社の近くにある循環器内科のクリニックを訪ねました。診察室で、これまでの症状を話すと、医師は真剣な表情で私の話を聞き、「それは、狭心症の可能性がありますね。いくつか検査をしてみましょう」と言いました。まず、心電図と胸のレントゲンを撮りました。その後、心臓の動きを直接見るための、心エコー検査を行いました。幸い、これらの検査では、安静時の心臓に明らかな異常は見つかりませんでした。しかし、医師は「労作時の症状なので、運動負荷心電図で、心臓に負荷をかけた時の状態を見てみましょう」と提案しました。後日、予約して行った運動負荷心電図検査では、胸に電極をつけたまま、ベルトコンベアのような機械(トレッドミル)の上を、徐々に速度と傾斜を上げながら歩きました。数分後、案の定、あの胸の圧迫感が現れ始めました。同時に、モニターに映し出されていた私の心電図の波形に、明らかな変化が現れたのです。「はい、ここで陽性反応が出ました。労作性狭心症で間違いないでしょう」と医師。診断が確定した瞬間でした。ショックでしたが、同時に、あの不快な症状の原因がはっきりと分かったことに、安堵する気持ちもありました。その日から、血管を広げる薬と、血液をサラサラにする薬による治療が始まりました。あの時、勇気を出して循環器内科を受診していなければ、いつか心筋梗塞を起こしていたかもしれないと思うと、今でもぞっとします。