足の水虫を、治療せずに長年放置していると、やがて、その原因である白癬菌が、足の爪の中へと侵入し、そこで増殖を始めてしまうことがあります。これが、「爪水虫(爪白癬)」です。爪水虫は、足の水虫とは異なり、かゆみなどの自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行してしまう、非常に厄介な病気です。爪水虫の初期症状として、まず、爪の先端や側面に、白や黄色っぽい筋状の変化が現れます。そして、病状が進行するにつれて、爪全体が白く濁ったり、黄色っぽく変色したりしていきます。さらに、爪が分厚く、もろくなり、ボロボロと崩れやすくなるのも大きな特徴です。見た目の問題だけでなく、分厚くなった爪が靴に当たって痛んだり、巻き爪の原因になったりすることもあります。この爪水虫が疑われる場合も、もちろん専門の診療科は「皮膚科」です。診断は、足の水虫と同様に、変形した爪の一部を削り取り、それを顕微鏡で調べて、白癬菌の存在を確認することで行われます。爪水虫の治療が、足の水虫と大きく異なるのは、塗り薬だけでは、なかなか治癒が難しいという点です。爪は、硬いケラチンというタンパク質でできているため、外から塗った薬の成分が、爪の内部深くまで浸透しにくいのです。そのため、爪水虫の治療の基本となるのは、「抗真菌薬の飲み薬(内服薬)」です。飲み薬は、血流に乗って、爪を作り出す根本の部分(爪母)にまで到達し、新しく生えてくる爪を、内側からきれいにしていくという効果があります。治療期間は、爪が生え変わるのに合わせて、半年から1年程度と、長期間にわたります。ただし、内服薬は、稀に肝機能に影響を与えることがあるため、治療中は、定期的に血液検査を行い、副作用がないかをチェックしながら、安全に進めていく必要があります。近年では、爪への浸透性が高い、新しいタイプの塗り薬(外用薬)も登場しており、症状が比較的軽度な場合や、持病などで飲み薬が使えない場合には、これらの塗り薬による治療が選択されることもあります。爪の変色に気づいたら、それは水虫が進行しているサインです。放置せず、皮膚科で正しい治療を受けましょう。