狭心症による胸の痛みには、いくつかの特徴的なパターンがあります。これらのサインを知っておくことは、病気の早期発見に繋がり、より深刻な「心筋梗塞」への進行を防ぐ上で、非常に重要です。まず、最も典型的な狭心症である「労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)」の症状です。これは、体を動かした時、つまり心臓が多くの酸素(血液)を必要とする時に現れます。きっかけ: 階段や坂道を上る、重いものを持つ、急いで歩く、興奮する、といった身体的・精神的な負荷がかかった時。痛みの場所: 胸の中央部、あるいは少し左側。しかし、左肩、腕の内側、顎、喉、歯、みぞおち、背中などに痛みが広がる(放散痛)ことも、非常に多く見られます。痛みの性質: 「締め付けられる」「圧迫される」「何か重いものを乗せられたよう」といった、鈍い痛みが特徴です。チクチクとした、針で刺すような鋭い痛みであることは、比較的稀です。持続時間: 通常、痛みは数分間、長くても15分以内には治まります。どうすると治まるか: 原因となった動作をやめて、安静にしていると、症状は自然に軽快します。また、ニトログリセリンという舌下錠が、即効性をもって効くのも大きな特徴です。次に、より注意が必要なのが、安静にしていても発作が起こるタイプの狭心症です。その一つが「冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)」です。これは、冠動脈が一時的にけいれん(攣縮)を起こして、急激に狭くなることで発症します。特に、夜間から早朝にかけて、睡眠中や安静にしている時に、胸の圧迫感や痛みで目が覚めるのが特徴です。日本人には比較的多いタイプで、喫煙やストレス、過度の飲酒が引き金となると言われています。そして、最も危険なのが「不安定狭心症」です。これは、これまでよりも軽い労作で発作が起きるようになった、発作の頻度が増えた、安静にしていても胸の痛みが起こるようになった、といった、症状が悪化している状態を指します。これは、冠動脈内のプラーク(動脈硬化による粥状の塊)が破れかかって、血栓ができ始めているサインであり、心筋梗塞に移行する一歩手前の、極めて危険な状態です。このような症状の変化に気づいたら、直ちに循環器内科を受診する必要があります。
狭心症のサイン?こんな胸の痛みに要注意