長年、私は、自分の右足の小指の間に、小さな秘密を抱えていました。夏になると、じゅくじゅくして皮がむけ、たまらなくかゆくなる。冬になると、少しマシになる。それを、毎年、繰り返していました。見て見ぬふりをし、市販のかゆみ止めを塗ってごまかす日々。「きっと、水虫だろうな」と、薄々感づいてはいましたが、「病院へ行くのは恥ずかしい」という気持ちが、どうしても勝ってしまっていました。しかし、去年の夏、その症状は、足の裏全体に広がり、かゆみは、仕事に集中できないほど、ひどくなりました。夜も、足の裏の熱っぽさとかゆみで、目が覚めてしまうほどです。もう、限界だ。私は、ついに観念し、近所の皮膚科のドアを叩く決心をしました。予約の日、待合室で待っている間も、私の心臓は、ドキドキと高鳴っていました。「足を診せるのが恥ずかしい」「臭かったらどうしよう」。そんな、くだらない心配ばかりが、頭をよぎります。やがて、名前を呼ばれ、診察室へ。優しそうな女性の医師に、私は、おそるおそる、自分の足を見せました。そして、長年の悩みを、ぽつりぽつりと話し始めました。医師は、私の足をじっと見た後、「顕微鏡で、菌がいるか見てみましょうね」と言って、足の裏の皮を、ピンセットで、ほんの少しだけ採取しました。痛みは全くありません。数分後、再び診察室に呼ばれると、医師は、顕微鏡のモニターを指さしました。「ここに、糸みたいに見えるのが、水虫の菌、白癬菌ですよ。しっかりいますね」。そこには、教科書で見たような、カビの菌糸が、はっきりと映っていました。恥ずかしさよりも、「やっぱりそうだったのか」という、妙な納得感と、原因がはっきりしたことへの安堵感の方が、大きかったのを覚えています。その日から、処方された抗真菌薬を、毎日、お風呂上がりに、丁寧に塗り続けました。すると、あれだけ私を悩ませていたかゆみは、1週間ほどで、嘘のように治まり、2ヶ月も経つ頃には、足の裏は、見違えるほどきれいになりました。今、私が思うのは、「なんでもっと早く来なかったんだろう」という、後悔の念です。恥ずかしさという、ほんの少しのハードルを越えれば、専門家の助けで、長年の悩みから、こんなにもあっさりと解放されるのです。もし、かつての私のように、一人で悩んでいる方がいるなら、ぜひ、勇気を出して、皮膚科を訪ねてみてほしいと、心から思います。
水虫で皮膚科へ、私の少し恥ずかしかった体験