最初は、小さな傷や虫刺されだったはずなのに、その周りから、熱を持った赤い腫れが、じわじわと広範囲に広がっていく。指全体が、あるいは手の甲までが、パンパンに腫れ上がり、強い痛みを伴う。このような症状は、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」の可能性があります。蜂窩織炎は、ひょう疽のように、膿が特定の場所に溜まるのではなく、皮膚の深い層である「皮下組織」に、細菌が広範囲にわたって侵入し、炎症を起こす病気です。原因となる細菌は、主に黄色ブドウ球菌や連鎖球菌で、皮膚のバリア機能が低下した、小さな傷口から侵入します。蜂窩織炎の特徴は、炎症の境界が比較的はっきりせず、赤みと腫れ、そして熱感(触ると熱い感じ)が、だんだんと広がっていく点にあります。指に発症した場合、指がソーセージのように腫れ上がり、曲げ伸ばしが困難になります。また、皮膚の感染症でありながら、発熱や悪寒、全身の倦怠感といった、全身症状を伴うことも少なくありません。これは、細菌が、皮下のリンパ管や血管を通じて、体内に影響を及ぼし始めているサインであり、注意が必要です。このような蜂窩織炎が疑われる場合、受診すべき診療科は、「皮膚科」です。しかし、高熱が出ている、あるいは腫れや痛みが非常に激しいといった、重症の場合は、入院設備のある総合病院の皮膚科や、場合によっては「形成外科」「感染症科」での治療が必要となることもあります。治療の基本は、原因となっている細菌に対する「抗菌薬(抗生物質)」の投与です。軽症であれば、内服薬で治療が可能ですが、症状が重い場合や、急速に悪化している場合には、入院して、点滴による強力な抗菌薬治療が行われます。また、患部を安静にし、心臓より高く挙げておく(挙上)ことも、腫れや痛みを和らげるために重要です。蜂窩織炎で最も怖いのは、適切な治療が遅れることで、細菌が血液中に入り込み、全身に回ってしまう「敗血症」という、命に関わる状態に陥るリスクがあることです。また、皮下に膿が溜まる「膿瘍」を形成した場合には、切開して膿を出す処置が必要になります。指の腫れが、ただの腫れではなく、広範囲に広がっていると感じたら、決して軽視せず、速やかに医療機関を受診してください。
指がパンパンに腫れる蜂窩織炎の怖さ