毎年、春になると、ティッシュが手放せない、つらい日々を送っている。そんな花粉症に悩む多くの方に、ぜひ実践していただきたいのが、「症状が出る前」、すなわち、花粉が本格的に飛散し始める前の、早期受診です。これは、「初期療法」と呼ばれ、シーズン中の症状を、格段に軽く抑えるための、最も効果的な戦略の一つです。花粉症の症状は、体内に花粉(アレルゲン)が侵入し、アレルギー反応の主役であるヒスタミンなどの化学伝達物質が、体内で大量に放出されることで引き起こされます。そして、一度、強い症状が出てしまうと、鼻や目の粘膜は、非常に過敏な状態になり、ほんの少しの花粉にも、過剰に反応するようになってしまいます。こうなると、薬を飲んでも、なかなか症状が治まらず、つらい状態が長引くことになります。初期療法は、この悪循環を断ち切るための治療法です。花粉が飛び始める2週間ほど前、あるいは、症状がまだごく軽いうちに、医療機関(耳鼻咽喉科、アレルギー科、眼科など)を受診し、抗アレルギー薬の服用や点眼を開始します。これにより、本格的な飛散シーズンを迎える前に、あらかじめ、アレルギー反応が起きにくい体の状態を作っておくのです。たとえるなら、火事が大きくなってから消火活動を始めるのではなく、小さな火種のうちに、あるいは火事が起きる前から、防火対策を徹底しておくようなものです。この初期療法を行うことで、シーズン中の症状のピークを、大幅に低く抑えることができ、症状が現れる期間も短縮できることが、多くの研究で証明されています。また、使用する薬の全体量を、結果的に減らすことにも繋がります。毎年、スギ花粉症に悩まされている方であれば、天気予報などで、花粉の飛散開始予測日をチェックし、その2週間前、つまり、関東地方であれば、1月の下旬から2月の初旬あたりが、受診の最適なタイミングとなります。毎年、つらい症状に耐えている方は、ぜひ、今年こそ「症状が出る前」の受診を心がけてみてください。その少しの先回りが、春の過ごし方を、劇的に変えてくれるかもしれません。
花粉症シーズン前の受診、その重要性