赤ちゃんがものもらい(麦粒腫)になり、まぶたがパンパンに腫れ上がり、膿が溜まっているのが見える。そんな時、保護者の方は、「この膿は、切って出さなければ治らないのだろうか」「赤ちゃんに切開なんて、痛くてかわいそう」と、大きな不安を感じることでしょう。結論から言うと、赤ちゃんのものもらいで、「切開排膿(せっかいはいのう)」という、まぶたを切って膿を出す処置が必要になるケースは、それほど多くはありません。ほとんどの赤ちゃんのものもらいは、抗菌薬の点眼や軟膏といった、保存的な薬物療法で、自然に改善していきます。赤ちゃんは、新陳代謝が活発で、組織の修復能力も高いため、薬で細菌の増殖を抑えてあげれば、膿は自然に吸収されたり、あるいは、皮膚が薄い部分から、自然に破れて排出されたりして、治癒に向かうことがほとんどです。そのため、医師も、まずは薬物療法を基本とし、できるだけ切開をせずに治す方向で、治療を進めるのが一般的です。しかし、中には、どうしても切開が必要となるケースも存在します。例えば、膿の量が非常に多く、まぶたが極度に腫れ上がって、痛みも非常に強く、赤ちゃんが哺乳もできないほど、ぐったりしてしまっている場合。あるいは、薬物療法を続けても、一向に改善の兆しが見られない、難治性の場合などです。このような状況では、膿による圧力が、強い痛みの原因となっているため、切開して膿を排出することで、症状を速やかに和らげ、治癒を早めることができるのです。もし、切開が必要と判断された場合でも、過度に心配する必要はありません。医師は、赤ちゃんへの負担が最小限になるように、細心の注意を払って処置を行います。多くの場合、赤ちゃんをバスタオルなどで優しく包んで、動かないように安全を確保し、点眼麻酔などを用いて、痛みをできるだけ感じないように配慮した上で、ごく短時間で処置を終えます。もちろん、切開という選択肢が提示されれば、保護者として不安に思うのは当然です。その際は、なぜ切開が必要なのか、処置の方法や、その後の経過について、納得できるまで医師に質問し、説明を受けることが大切です。医師と保護者が、しっかりと連携し、赤ちゃんにとって最善の治療法を選択していくことが、何よりも重要です。