医療保険制度や診療報酬のチェックポイント解説

2025年7月
  • 爪が白く濁ってきたら?爪水虫は皮膚科へ

    医療

    足の水虫を、治療せずに長年放置していると、やがて、その原因である白癬菌が、足の爪の中へと侵入し、そこで増殖を始めてしまうことがあります。これが、「爪水虫(爪白癬)」です。爪水虫は、足の水虫とは異なり、かゆみなどの自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行してしまう、非常に厄介な病気です。爪水虫の初期症状として、まず、爪の先端や側面に、白や黄色っぽい筋状の変化が現れます。そして、病状が進行するにつれて、爪全体が白く濁ったり、黄色っぽく変色したりしていきます。さらに、爪が分厚く、もろくなり、ボロボロと崩れやすくなるのも大きな特徴です。見た目の問題だけでなく、分厚くなった爪が靴に当たって痛んだり、巻き爪の原因になったりすることもあります。この爪水虫が疑われる場合も、もちろん専門の診療科は「皮膚科」です。診断は、足の水虫と同様に、変形した爪の一部を削り取り、それを顕微鏡で調べて、白癬菌の存在を確認することで行われます。爪水虫の治療が、足の水虫と大きく異なるのは、塗り薬だけでは、なかなか治癒が難しいという点です。爪は、硬いケラチンというタンパク質でできているため、外から塗った薬の成分が、爪の内部深くまで浸透しにくいのです。そのため、爪水虫の治療の基本となるのは、「抗真菌薬の飲み薬(内服薬)」です。飲み薬は、血流に乗って、爪を作り出す根本の部分(爪母)にまで到達し、新しく生えてくる爪を、内側からきれいにしていくという効果があります。治療期間は、爪が生え変わるのに合わせて、半年から1年程度と、長期間にわたります。ただし、内服薬は、稀に肝機能に影響を与えることがあるため、治療中は、定期的に血液検査を行い、副作用がないかをチェックしながら、安全に進めていく必要があります。近年では、爪への浸透性が高い、新しいタイプの塗り薬(外用薬)も登場しており、症状が比較的軽度な場合や、持病などで飲み薬が使えない場合には、これらの塗り薬による治療が選択されることもあります。爪の変色に気づいたら、それは水虫が進行しているサインです。放置せず、皮膚科で正しい治療を受けましょう。

  • 狭心症かも?私が循環器内科へ行った日

    生活

    私は58歳のサラリーマンです。数ヶ月前から、通勤途中、駅の階段を急いで上ると、胸の中央あたりに、ぐーっと圧迫されるような、何とも言えない息苦しさを感じるようになりました。最初は、「歳のせいか、体力が落ちたな」くらいにしか考えていませんでした。その圧迫感も、ホームに着いて一息つくと、2、3分で自然に消えてしまうので、あまり深刻には捉えていなかったのです。しかし、ある朝、取引先へ向かうために早歩きをしていた時、これまでよりも強い胸の圧迫感と共に、左の肩から腕にかけて、じーんとしびれるような痛みが走りました。さすがに「これは、ただごとではないかもしれない」と、私の心に不安がよぎりました。その日の午後、私は意を決して、会社の近くにある循環器内科のクリニックを訪ねました。診察室で、これまでの症状を話すと、医師は真剣な表情で私の話を聞き、「それは、狭心症の可能性がありますね。いくつか検査をしてみましょう」と言いました。まず、心電図と胸のレントゲンを撮りました。その後、心臓の動きを直接見るための、心エコー検査を行いました。幸い、これらの検査では、安静時の心臓に明らかな異常は見つかりませんでした。しかし、医師は「労作時の症状なので、運動負荷心電図で、心臓に負荷をかけた時の状態を見てみましょう」と提案しました。後日、予約して行った運動負荷心電図検査では、胸に電極をつけたまま、ベルトコンベアのような機械(トレッドミル)の上を、徐々に速度と傾斜を上げながら歩きました。数分後、案の定、あの胸の圧迫感が現れ始めました。同時に、モニターに映し出されていた私の心電図の波形に、明らかな変化が現れたのです。「はい、ここで陽性反応が出ました。労作性狭心症で間違いないでしょう」と医師。診断が確定した瞬間でした。ショックでしたが、同時に、あの不快な症状の原因がはっきりと分かったことに、安堵する気持ちもありました。その日から、血管を広げる薬と、血液をサラサラにする薬による治療が始まりました。あの時、勇気を出して循環器内科を受診していなければ、いつか心筋梗塞を起こしていたかもしれないと思うと、今でもぞっとします。

  • ものもらい?アレルギー?赤ちゃんのまぶたの腫れ

    医療

    赤ちゃんのまぶたが赤く腫れている。その原因として、まず考えられるのは、細菌感染による「ものもらい(麦粒腫)」ですが、時には、全く別の原因、「アレルギー」によって、同様の症状が引き起こされている可能性もあります。この二つは、原因が異なるため、治療法も変わってきます。その違いを見分けることは、適切なケアに繋がる上で重要です。まず、「ものもらい」による腫れの特徴です。これは、細菌感染による急性の炎症であるため、通常、「片方の目」の、まぶたの一部が、局所的に赤く腫れ、痛みや熱感を伴います。しこりのようなものを触れることもあり、進行すると、膿点がはっきりと見えるようになります。一方、「アレルギー」によるまぶたの腫れは、花粉やハウスダスト、食物、あるいは動物の毛といった、特定のアレルゲンに対する体の免疫反応によって引き起こされます。アレルギー反応では、ヒスタミンという物質が放出され、血管が拡張し、皮膚に炎症が起こります。そのため、症状は、「両方の目」に、同時に現れることが多いのが特徴です。また、まぶた全体が、むくんだように、あるいは腫れぼったくなる感じで、局所的なしこりを伴うことは、あまりありません。そして、最も大きな違いが、伴う症状です。アレルギー性のまぶたの腫れの場合、「強いかゆみ」を伴うことが、非常に多く見られます。赤ちゃんは、しきりに目をこすり、その刺激で、さらに腫れが悪化することもあります。また、目の充血や、サラサラとした涙のような目やに、くしゃみ、鼻水といった、アレルギー性結膜炎や、アレルギー性鼻炎の症状を、同時に合併していることも、診断の大きな手がかりとなります。もし、赤ちゃんのまぶたの腫れが、両目に起こり、強いかゆみを伴っているようであれば、アレルギーの可能性を考える必要があります。このような場合は、まず「小児科」を受診し、アレルギーが疑われる旨を伝えましょう。必要であれば、「アレルギー科」や「眼科」といった、専門の診療科を紹介してもらうことになります。アレルギーの治療は、抗アレルギー薬の点眼や内服が中心となり、ものもらいの抗菌薬とは、全く異なるアプローチが必要となるのです。

  • 声が出ない原因、反回神経麻痺という病気

    医療

    風邪でもない、声の使いすぎでもないのに、声がかすれたり、出にくくなったりする症状が続く場合、その背景に「反回神経麻痺(はんかいしんけいまひ)」という、神経の病気が隠れていることがあります。これは、声帯を動かすための重要な神経である「反回神経」が、何らかの原因で麻痺してしまい、声帯の動きが悪くなってしまう病気です。私たちの声帯は、左右一対あり、この反回神経からの指令によって、開いたり閉じたりしています。しかし、片側の反回神経が麻痺すると、麻痺した側の声帯が、開いたままの位置、あるいは中間位で動かなくなってしまいます。すると、声を出す時に、左右の声帯がピッタリと閉じることができなくなり、その隙間から息が漏れてしまうため、力のない、かすれた「嗄声(させい)」になります。また、食べ物や飲み物が、この隙間から気管に入りやすくなるため、「むせやすい(誤嚥)」といった症状が現れることもあります。では、なぜ、この反回神経は麻痺してしまうのでしょうか。その原因は様々ですが、最も多いのは、首や胸の手術、例えば、甲状腺がんや食道がん、肺がん、あるいは心臓の大動脈瘤の手術の際に、神経が損傷を受けたり、影響を受けたりすることによるものです。反回神経は、脳から出て、一度、胸の中まで下がり、再び喉へとUターンして戻ってくるという、非常に長い走行ルートをとっています。そのため、首から胸にかけての、様々な臓C器の病変や手術の影響を受けやすいのです。手術以外にも、原因が特定できない、ウイルス感染などが疑われる「特発性」のものや、前述のがんが、直接、神経を圧迫して麻痺を引き起こしている場合もあります。反回神経麻痺の診断には、「耳鼻咽喉科」での喉頭ファイバースコープ検査が不可欠です。検査で、片側の声帯の動きが明らかに悪いことが確認されれば、診断は確定します。その後、CT検査などで、麻痺の原因となっている病気がないかを、詳しく調べることになります。治療は、まず原因となっている病気の治療が優先されます。麻痺が自然に回復する可能性もあるため、数ヶ月から1年程度、音声治療(リハビリテーション)などを行いながら、経過を見るのが一般的です。もし、回復が見られない場合や、誤嚥の症状が強い場合には、麻痺した声帯を中央に寄せて、声帯の隙間を閉じるための手術(喉頭形成術など)が検討されることもあります。

  • 喉の赤いブツブツ、何科へ行けばいい?

    医療

    喉の奥にできた、赤いブツブツ。その原因は、単純な免疫反応から、感染症、あるいは他の病気まで、様々です。この症状に気づいた時、適切な診療科を選ぶことは、正確な診断と、効果的な治療への、重要な第一歩となります。喉のトラブルを専門的に診療する中心的な科は、「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科は、その名の通り、耳、鼻、そして喉(咽頭・喉頭)の病気を専門とするエキスパートです。医師は、まず問診で、ブツブツにいつ気づいたか、痛みや発熱などの他の症状はあるか、といったことを詳しく聞き取ります。そして、耳鼻咽喉科の最大の強みである、「専門的な診察器具」を用いて、喉の状態を詳細に観察します。口を開けて、舌を抑えて見るだけでなく、「喉頭ファイバースコープ」という、鼻から挿入する細いカメラを使って、肉眼では見えない、喉の奥深くや、声帯の状態まで、鮮明に確認することができるのです。これにより、ブツブツの正体が、リンパ濾胞の腫れなのか、あるいは、扁桃腺の炎症や、ポリープ、さらには、ごく稀ですが、腫瘍性のできものなのかを、正確に鑑別することが可能になります。特に、強い喉の痛みや発熱を伴う場合は、溶連菌感染症などを疑い、喉の粘液を綿棒でこすり取って調べる、迅速検査を行うこともできます。もし、ブツブツの原因が、副鼻腔炎からの後鼻漏など、鼻の病気にあると疑われる場合も、耳鼻咽喉科であれば、鼻の診察と治療を、同時に行うことができます。では、「内科」や「小児科」ではどうでしょうか。もちろん、これらの科でも、一般的な風邪に伴う喉の症状や、溶連菌感染症などの診療は可能です。発熱や全身の倦怠感が強い場合や、かかりつけ医に、まずは相談したいという場合には、良い選択肢となります。しかし、喉のブツブツの正体を、直接、詳しく観察し、確定的な診断を下すという点においては、やはり耳鼻咽喉科に勝るものはありません。特に、症状が長引いている場合や、原因がはっきりしない場合は、一度、喉の専門家である耳鼻咽喉科を受診することを、強くお勧めします。

  • 循環器内科と心臓血管外科、狭心症での役割分担

    医療

    狭心症の治療を考える上で、しばしば耳にするのが「循環器内科」と「心臓血管外科」という二つの診療科です。どちらも心臓を専門としていますが、その治療アプローチと役割には、明確な違いがあります。この違いを理解しておくことは、患者さんが、これから受ける治療の流れを把握し、安心して臨むために非常に重要です。まず、「循環器内科」は、狭心症の診断から治療までの、中心的な役割を担います。その治療方法は、主に「内科的」なアプローチです。基本となるのが、「薬物療法」です。血管を広げて心臓の負担を減らす薬や、血液をサラサラにして血栓ができるのを防ぐ薬、あるいは心拍数を落ち着かせる薬などを、患者さんの状態に合わせて組み合わせ、発作を予防し、病気の進行を抑えます。そして、薬物療法だけでは症状がコントロールできない場合や、冠動脈の狭窄が高度である場合に行われるのが、「カテーテル治療(カテーテルインターベンション)」です。これは、手首や足の付け根の動脈から、カテーテルと呼ばれる細い管を心臓まで挿入し、狭くなった冠動脈を、先端についた風船で広げたり、「ステント」という金属製の網状の筒を留置して、血管を内側から支えたりする治療法です。体に大きな傷をつけることなく、低侵襲で治療できるのが、このカテーテル治療の大きなメリットです。一方、「心臓血管外科」は、その名の通り「外科的」なアプローチ、つまり手術によって病気を治療する専門家です。狭心症の治療においては、「冠動脈バイパス手術」が、その代表的な手術となります。これは、冠動脈の狭窄が複数箇所にわたっていたり、カテーテル治療が困難な場所に病変があったりする場合に選択されます。体の他の部分(胸や足など)から採取した血管を使って、狭くなった冠動脈の先に、新しい血の通り道(バイパス)を作り、心筋への血流を確保するという手術です。通常、胸の骨を切り開いて行う、いわゆる「開心術」となります。診療の流れとしては、まず循環器内科で精密検査を行い、その結果に基づいて、カテーテル治療とバイパス手術のどちらが、その患者さんにとって最適かを、循環器内科医と心臓血管外科医が合同で検討(ハートチームカンファレンス)し、最終的な治療方針が決定されます。

  • 市販薬で悪化?水虫の自己判断は危険

    医療

    足がかゆい、皮がむける。そう感じた時、多くの人がまず考えるのは、ドラッグストアで市販の水虫薬を買ってきて、自分で治そうとすることかもしれません。確かに、市販薬は手軽で便利ですが、そこにはいくつかの落とし穴が潜んでいます。自己判断による水虫治療は、時として、症状を悪化させたり、治癒を遅らせたりする危険性をはらんでいるのです。まず、最大のリスクは、「そもそも水虫ではなかった」という可能性です。足の裏の皮がむけたり、水ぶくれができたりする病気は、水虫だけではありません。例えば、汗が原因で起こる「汗疱(異汗性湿疹)」や、何かにかぶれて起こる「接触皮膚炎」など、水虫とそっくりな症状を示す皮膚病は数多く存在します。もし、これらの水虫ではない病気に、市販の水虫薬(抗真菌薬)を塗り続けても、当然ながら効果はありません。それどころか、薬の成分による刺激で、かぶれを起こし、症状がさらに悪化してしまうことさえあります。逆のケースも、同様に危険です。水虫であるにもかかわらず、ただの湿疹だと思い込み、市販のステロイド軟膏(湿疹やかぶれの薬)を塗ってしまうと、どうなるでしょうか。ステロイドには、免疫を抑える作用があるため、塗った直後は、かゆみや炎症が一時的に和らぐことがあります。しかし、水虫の原因である白癬菌にとっては、免疫という天敵がいなくなり、かえって増殖しやすい、好都合な環境が作られてしまいます。その結果、水虫はさらに広範囲に悪化し、治療がより困難な状態になってしまうのです。これを「無自覚なステロイド外用による症状の悪化」を意味する、「ステロイドいんきん」と呼ぶこともあります。このように、自己判断による治療は、的確な診断という土台がないままに行う、非常にリスクの高い行為です。確実に治すためには、まず皮膚科を受診し、顕微鏡検査で、本当に白癬菌がいるのかどうかを確定させてもらうこと。それが、遠回りのようで、実は最も安全で確実な治療への近道なのです。

  • 声が出ない!私が急性声帯炎になった体験

    生活

    それは、ある冬の朝、突然やってきました。前日に、少し喉がイガイガするな、と感じてはいたのですが、目が覚めて、おはようと言おうとした瞬間、声が出ないことに気づきました。というより、声を出そうとしても、喉から出てくるのは「シュー」という、かすれた空気の音だけ。まるで、ラジオのボリュームをゼロにしたような感覚でした。当時、私は営業職で、人と話すことが仕事の生命線でした。声が出ないなど、致命的です。慌てて、スマートフォンのメモ機能に「声が出ません。病院へ行きます」と打ち、上司に見せて、急いで会社の近くの耳鼻咽喉科へ駆け込みました。受付では、筆談で症状を伝え、診察室へ。医師は、私の喉の様子を見ると、「鼻からカメラを入れますね」と言いました。細いファイバースコープが鼻から喉の奥へと進んでいく感覚は、少し不快でしたが、モニターに映し出された自分の声帯を見て、私は愕然としました。そこには、普段は白いはずの声帯が、真っ赤に腫れ上がり、まるで炎症でパンパンになった、別の生き物のような姿が映し出されていました。「ひどい急性声帯炎ですね。風邪のウイルスが原因でしょう」と医師。そして、治療法として告げられたのは、「とにかく、話さないこと。沈黙が一番の薬です」という、私にとっては最も過酷な言葉でした。その日から、私の「沈黙生活」が始まりました。仕事の電話は同僚に代わってもらい、社内でのやりとりは、全てチャットか、ホワイトボードへの筆談。お客様との打ち合わせも、全て延期させてもらいました。日常生活でも、家族との会話はメモ帳頼り。声を出せないもどかしさと、周囲への申し訳なさで、精神的にもかなり落ち込みました。医師から処方された炎症を抑える薬を飲み、加湿器をガンガンに焚き、毎日、吸入治療のために病院へ通いました。そして、ひたすら沈黙を守り続けること1週間。診察で再びファイバースコープを見ると、あれほど真っ赤だった声帯の腫れが、少しずつ引いてきているのが分かりました。そして、医師の許可のもと、恐る恐る小さな声を出してみると、かすれてはいるものの、確かに「声」が出たのです。あの時の安堵感は、今でも忘れられません。完全に元の声に戻るまでには、2週間以上かかりました。この経験を通じて、普段、当たり前のように使っている「声」のありがたさを、身をもって知りました。

  • 全身のアレルギー症状ならアレルギー科へ

    医療

    くしゃみや鼻水、目のかゆみといった、典型的な花粉症の症状だけでなく、喉のイガイガや咳、さらには皮膚のかゆみや湿疹まで出てくる。このように、アレルギー症状が、目や鼻だけでなく、全身に及んでいる場合は、「アレルギー科」を受診するのが、最も理にかなった選択と言えるでしょう。アレルギー科は、花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーといった、様々なアレルギー疾患を、横断的かつ専門的に診療する科です。個々の症状を診るだけでなく、その背景にある「アレルギー体質」そのものにアプローチし、根本的な改善を目指すのが、アレルギー科の大きな特徴です。アレルギー科では、まず、何がアレルギーの原因(アレルゲン)となっているのかを特定するための、詳しい検査を行います。その代表的なものが、「血液検査(特異的IgE抗体検査)」です。少量の血液を採取するだけで、スギやヒノキ、ブタクサといった様々な花粉や、ハウスダスト、ダニなど、自分がどのアレルゲンに対してアレルギー反応を起こしやすい体質なのかを、客観的な数値として知ることができます。この結果に基づいて、アレルゲンを生活環境からできるだけ除去・回避するための、具体的な指導を受けることができます。そして、アレルギー科ならではの、より根本的な治療法として注目されているのが、「アレルゲン免疫療法」です。これは、アレルギーの原因となっているアレルゲンを、少量から、体に投与し、徐々にその量を増やしていくことで、体をアレルゲンに慣れさせ、アレルギー反応そのものを起こしにくくさせるという治療法です。従来は、皮下注射による方法が主流でしたが、近年では、自宅で毎日、舌の下に治療薬を含ませる「舌下免疫療法」が登場し、より手軽に治療を受けられるようになりました。この治療は、効果が現れるまでに数年単位の期間が必要となりますが、花粉症を根治させたり、長期にわたって症状を抑えたりできる、唯一の治療法とされています。このように、アレルギー科は、対症療法だけでなく、原因の特定から体質改善まで、包括的な視点でアレルギーと向き合ってくれる、非常に頼りになる存在です。

  • 声が出ない時に絶対やってはいけないこと

    知識

    突然、声が出なくなってしまった時、多くの人は焦りや不安から、つい、症状を悪化させてしまうような行動をとってしまいがちです。声帯が炎症を起こしている、あるいはダメージを受けている時に、良かれと思ってやったことが、かえって治りを遅くし、症状を長引かせる原因となります。声が出ない時に、絶対にやってはいけないNG行動をいくつか知っておきましょう。まず、最もやってはいけないのが、「無理に声を出そうとする」ことです。声が出ないのは、声帯が正常に振動できない状態だからです。その状態で、無理に声を出そうと力むことは、腫れ上がった声帯同士を無理やりこすり合わせるようなものであり、炎症をさらに悪化させ、声帯の粘膜を傷つけてしまいます。特に、「ひそひそ声(囁き声)」は、一見、喉に優しそうに思えますが、実は、通常の発声よりも、声帯の周りの筋肉に余計な緊張を強いるため、声帯への負担が大きいことが分かっています。話す必要がある場合は、筆談やスマートフォンのメモ機能などを活用し、できる限り声帯を休ませる「沈黙」を徹底することが、最も効果的な治療法です。次に、「喉に刺激を与えるもの」も避けるべきです。例えば、香辛料を多用した辛い食べ物や、熱すぎる飲み物、あるいはアルコールなどは、喉の粘膜を直接刺激し、炎症を悪化させる原因となります。また、「タバコ」は論外です。タバコの煙は、声帯にとって最悪の刺激物であり、炎症を長引かせるだけでなく、慢性的な声帯炎や、喉頭がんのリスクを高めます。声の不調がある間は、禁煙を徹底しましょう。さらに、「喉を乾燥させる」ことも、回復を妨げます。声帯の粘膜は、潤っていることで正常に機能します。空気が乾燥した部屋に長時間いることは避け、加湿器を使用したり、濡れタオルを干したりして、室内の湿度を適切に保つように心がけましょう。マスクの着用も、自身の呼気で喉の湿度を保つ効果が期待できます。これらのNG行動を避け、声帯にとって最適な環境を整えてあげることが、つらい症状から一日も早く回復するための、重要な鍵となるのです。