医療保険制度や診療報酬のチェックポイント解説

2025年8月
  • 皮膚科では何をする?水虫の検査と診断

    医療

    「水虫かもしれないけれど、病院へ行ったら、どんなことをされるのだろう」と、不安に感じている方もいるかもしれません。特に、皮膚科に馴染みのない方にとっては、診察や検査の内容は、気になることでしょう。しかし、水虫の診断プロセスは、非常にシンプルで、患者さんの体に大きな負担をかけるものではありませんので、安心してください。まず、診察室に入ると、医師による「問診」から始まります。いつから、足のどの部分に、どのような症状(かゆみ、皮むけ、水ぶくれなど)があるのか。家族に水虫の人はいないか。これまでに自分で何か薬を使ったか、などを詳しく聞かれます。次に、医師が、患部の状態を直接目で見て確認する「視診」を行います。症状の広がりや、皮膚の状態を詳細に観察し、水虫の可能性が高いかどうかを判断します。そして、診断を確定させるために行われるのが、水虫診断のゴールドスタンダードとも言える、「直接鏡検(ちょくせつきょうけん)」、いわゆる「顕微鏡検査」です。これは、非常に簡単で、痛みも伴わない検査です。医師は、ピンセットやメスの刃などで、患部の皮膚の表面、つまり、ポロポロとむけている角質や、水ぶくれの膜などを、ごく少量、優しくこすり取ります。採取した角質を、スライドガラスの上に乗せ、水酸化カリウム(KOH)という薬品を1滴垂らします。この薬品は、人間の皮膚の細胞(角質)を溶かす働きがありますが、水虫の原因である白癬菌の細胞壁は溶かさない、という性質を持っています。スライドガラスを少し温めて、角質を溶かした後、顕微鏡で観察します。もし、そこに白癬菌がいれば、角質細胞が溶けて見えやすくなった視野の中に、糸状の菌糸や、丸い胞子が、はっきりと姿を現します。この検査で、白癬菌が確認されれば、「足白癬(水虫)」という確定診断が下され、抗真菌薬による適切な治療が開始されます。この一連の検査は、通常、数分から10分程度で終わります。この簡単な検査を受けるだけで、あなたの足の悩みの本当の原因が分かり、効果的な治療への道が開かれるのです。

  • 鼻の症状が主なら耳鼻咽喉科へ

    医療

    くしゃみが連発して止まらない、蛇口をひねったかのようにサラサラの鼻水が流れ出てくる、そして、両方の鼻が完全に詰まってしまい、息苦しくて夜も眠れない。花粉症の症状の中でも、特にこの「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」という、三大鼻症状に悩まされている方は、非常に多いことでしょう。このような、鼻のトラブルが中心である場合に、最も頼りになる専門家が、「耳鼻咽喉科」の医師です。耳鼻咽喉科は、その名の通り、耳、鼻、喉(咽頭・喉頭)の病気を専門的に診療する科です。花粉症の診療においては、まず問診で症状の詳しい内容や、毎年どの時期に症状が出るかなどを聞き取ります。そして、鼻の中を直接観察し、花粉症に特徴的な、粘膜の腫れや、水っぽい鼻水の状態を確認することで、診断を下します。アレルギーの原因を特定するために、鼻の粘液を採取して、アレルギー反応に関わる好酸球という細胞が増えていないかを調べる検査や、血液検査を行うこともあります。治療の基本となるのは、アレルギー反応を抑える「抗ヒスタミン薬」の内服薬です。近年では、眠気などの副作用が少ない、第二世代の抗ヒスタミン薬が主流となっています。しかし、耳鼻咽喉科の強みは、それだけではありません。鼻の症状に特化した、より専門的な治療法を提供できる点にあります。例えば、鼻づまりが特にひどい場合には、鼻の粘膜の血管を収縮させる成分や、ステロイドが含まれた「点鼻薬」を処方します。これにより、内服薬だけでは抑えきれない、頑固な鼻づまりを効果的に改善させることができます。また、薬物療法で十分な効果が得られない方や、薬を飲み続けたくないという方に対しては、「レーザー治療」という選択肢もあります。これは、アレルギー反応の主戦場である鼻の粘膜(下鼻甲介)を、レーザーで焼灼することで、粘膜を意図的に変性させ、花粉が付着してもアレルギー反応が起きにくくするという治療法です。シーズン前に治療を行っておくことで、症状を大幅に軽減させる効果が期待できます。このように、鼻の症状に多角的にアプローチできるのが、耳鼻咽喉科の最大のメリットです。

  • 指のばい菌、整形外科と形成外科の役割

    医療

    指がばい菌に感染し、赤く腫れて痛む。この時、多くの人がまず思い浮かべる診療科は、皮膚科かもしれません。しかし、症状の程度や原因によっては、「整形外科」や「形成外科」といった、外科系の診療科が、より専門的な対応をすることもあります。これらの科は、それぞれどのような役割を担っているのでしょうか。まず、「整形外科」は、骨、関節、筋肉、腱、神経といった、運動器の病気や怪我を専門とする科です。指の感染症において、整形外科の出番となるのは、感染が、皮膚の表面だけでなく、より深い組織にまで及んでいる、あるいはその可能性が疑われる場合です。例えば、動物に深く噛まれた、あるいはガラス片などが深く刺さったといった、外傷が原因で感染した場合、傷が骨や腱、関節にまで達していないかを評価する必要があります。また、ひょう疽や蜂窩織炎が重症化し、指の骨にまで感染が及ぶ「骨髄炎」や、腱の周りに膿が溜まる「化膿性腱鞘炎」といった、重篤な状態に進行してしまった場合、これらの治療は、まさに整形外科の専門領域となります。これらの病気は、指の機能を著しく損なう危険性があり、多くの場合、入院して、手術による膿の排出や、傷んだ組織の除去(デブリードマン)が必要となります。次に、「形成外科」です。形成外科は、体の表面に生じた、組織の異常や変形、欠損などを、機能的にも、そして「整容的(見た目)」にも、より正常に近い状態に再建することを専門とする科です。指の感染症においては、例えば、感染によって皮膚が大きく欠損してしまった場合や、手術によってできた傷跡を、できるだけきれいに治したい、といった場合に、その専門性が発揮されます。皮膚移植などの、高度な再建手術を行うこともあります。また、皮膚の下にできた、良性腫瘍(粉瘤や脂肪腫など)の切除手術も、皮膚科だけでなく、形成外科で広く行われています。傷跡を最小限に、そして目立たなく仕上げる技術に長けているのが、形成外科の大きな特徴です。まとめると、一般的な指の細菌感染は「皮膚科」、感染が骨や腱など深部に及ぶ重症例は「整形外科」、そして、傷跡をきれいに治したい、あるいは再建が必要な場合は「形成外科」と、それぞれの専門性に応じて、連携しながら治療にあたることになります。

  • 声が出ない、ストレスが原因の可能性も

    医療

    風邪をひいたわけでもなく、声を使いすぎた覚えもない。耳鼻咽喉科で声帯を診てもらっても、「特に異常はありません」と言われた。それなのに、なぜか急に声が出なくなってしまった。このような、喉に明らかな器質的な異常が見られないにもかかわらず、声が出なくなる症状は、「心因性失声症(しんいんせいしっせいしょう)」の可能性があります。これは、その名の通り、強い精神的なストレスや、心理的な葛藤が、声という身体的な症状となって現れる、心身症の一種です。私たちの「声を出す」という行為は、非常に繊細な自律神経のコントロールのもとで行われています。しかし、仕事や家庭、人間関係などで、耐えがたいほどの強いストレスや、ショックな出来事を経験すると、この自律神経のバランスが崩れ、声帯を動かす筋肉が、無意識のうちに異常に緊張してしまったり、あるいは逆に、うまく力が入らなくなってしまったりすることがあります。その結果、声帯が正常に閉じなくなり、声が出せなくなってしまうのです。心因性失声症には、いくつかの特徴があります。まず、全く声が出せない失声状態であっても、咳払いをしたり、笑ったりする時には、正常な声が出ることがあります。これは、発声という意識的な行為の時だけ、声帯のコントロールがうまくいかなくなるためです。また、症状が突然始まり、そして、何かのきっかけで突然治る、といったように、症状が変動しやすいのも特徴です。女性に多く見られる傾向もあります。このような症状に心当たりがある場合、相談すべき診療科は、「耳鼻咽喉科」に加えて、「心療内科」や「精神科」といった、心の専門家が挙げられます。まず、耳鼻咽喉科で、声帯にポリープや麻痺といった、器質的な病気がないことを、きちんと確認してもらうことが大前提です。その上で、心因性の要因が強く疑われる場合には、心療内科などで、カウンセリングや心理療法を通じて、ストレスの原因となっている問題と向き合い、心の負担を軽減していくアプローチが中心となります。時には、精神的な緊張を和らげるための薬が処方されることもあります。声が出ないというつらい症状は、あなたの心が発している、言葉にならないSOSサインなのかもしれません。

  • 喉の赤いブツブツ、その正体と原因は?

    医療

    ある日、鏡でふと喉の奥を見てみると、赤いブツブツとしたものができていて、驚いた経験はありませんか。痛みや発熱といった他の症状がなくても、見慣れないものが喉にあると、「何か悪い病気ではないだろうか」と、不安になるものです。この、喉の奥の壁(咽頭後壁)に見える、赤いブツブツの正体として、最も一般的に考えられるのが、「リンパ濾胞(ろほう)」の腫れです。リンパ濾胞とは、喉の粘膜の下にある、免疫を担当するリンパ組織の集まりです。普段は、ほとんど目立ちませんが、私たちの体は、鼻や口から侵入してくる細菌やウイルスと、常に戦っています。風邪をひいたり、空気が乾燥して喉の粘膜がダメージを受けたり、あるいは、疲労やストレスで体の抵抗力が落ちたりすると、この喉の免疫システムが活発に働きます。その結果、リンパ濾胞が、外敵と戦うために反応して、赤く腫れ上がり、ブツブツとして目立つようになるのです。これは、言ってみれば、喉の免疫部隊が、臨戦態勢に入っているサインのようなものです。多くの場合、このリンパ濾胞の腫れは、原因となっている風邪などが治まったり、体のコンディションが回復したりすれば、自然に目立たなくなっていきます。痛みなどの症状がなければ、過度に心配する必要はありません。しかし、この赤いブツブツが、長期間消えない、数が増えたり大きくなったりする、あるいは、強い痛みや発熱、飲み込みにくさといった、他の症状を伴う場合は、注意が必要です。それは、単なる免疫反応ではなく、溶連菌感染症などの細菌感染や、ヘルパンギーナといったウイルス感染症、あるいは、稀ではありますが、他の病気のサインである可能性も考えられます。喉の赤いブツブツに気づいたら、まずは、十分な休息と、うがいなどで喉を清潔に保つことを心がけましょう。それでも、症状が改善しない、あるいは不安が続く場合は、自己判断せず、耳鼻咽喉科などの専門医に相談することが大切です。

  • 私の花粉症、何科に行けば?体験から学ぶ選び方

    知識

    私は、長年、重度のスギ花粉症に悩まされてきました。その症状は、一つではなく、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、そして喉のイガイガと、多岐にわたります。そのため、毎年、花粉シーズンが近づくと、「今年は、どの科にお世話になろうか」と、自分の最もつらい症状と相談しながら、受診先を決めています。私が最初に花粉症で病院を訪れたのは、大学生の時でした。その時は、とにかく、滝のように流れる鼻水と、ティッシュをいくら使っても追いつかない、くしゃみの連発が一番の悩みでした。そこで私が選んだのは、「耳鼻咽喉科」です。診察で、鼻の粘膜が真っ白に腫れ上がっているのを見せてもらい、「典型的なアレルギー性鼻炎ですね」と診断されました。処方された内服薬と、ステロイドの点鼻薬を併用すると、あれほどひどかった鼻水が、かなりコントロールできるようになったのを覚えています。社会人になり、デスクワーク中心の生活になると、今度は、鼻づまりと、それに伴う頭痛、そして、パソコンの画面を見るのも辛いほどの、目のかゆみが、私の最大の敵となりました。特に、目のかゆみは、内服薬だけでは全く歯が立たず、目を掻きすぎて、白目がブヨブヨに腫れてしまうほど。この時は、耳鼻咽喉科に加えて、「眼科」も受診しました。眼科で処方された抗アレルギー点眼薬は、かゆみを直接抑えてくれる、まさに救世主のような存在でした。そして、数年前、根本的な体質改善を目指そうと決意した私が、門を叩いたのが「アレルギー科」です。血液検査で、自分がスギとヒノキに、極めて強いアレルギーを持っていることを、客観的な数値で確認しました。そして、医師と相談の上、「舌下免疫療法」を開始することにしたのです。毎日、舌の下に治療薬を含ませるという、地道な治療ですが、これを始めてから、シーズン中の症状は、明らかに軽くなりました。このように、私自身の経験からも言えるのは、花粉症の治療は、一つの正解があるわけではなく、その時の最もつらい症状に応じて、専門家を上手に使い分けることが大切だということです。

  • 花粉症で内科を受診するのはあり?

    医療

    花粉症の季節、くしゃみや鼻水、そして微熱や体のだるさも感じる。そんな時、専門の耳鼻咽喉科やアレルギー科が近くになかったり、あるいは、普段から体調のことで相談している、かかりつけの「内科」で、まとめて診てもらいたい、と考える方もいるでしょう。では、花粉症の症状で、内科を受診するのは、適切な選択なのでしょうか。結論から言うと、全く問題ありません。むしろ、内科は、地域医療における最初の窓口(プライマリ・ケア)として、花粉症の診療においても、重要な役割を担っています。ほとんどの内科クリニックでは、花粉症の基本的な診断と治療が可能です。医師は、問診で、季節性の症状であることや、アレルギーの既往歴などを確認し、花粉症と診断します。そして、治療の基本となる、アレルギー反応を抑えるための「抗ヒスタミン薬」などの内服薬を処方してくれます。花粉症の症状は、時に、頭が重い、体がだるい、集中力が低下するといった、全身の倦怠感を伴うことがあります。これは、アレルギー反応そのものによる影響や、鼻づまりによる睡眠不足などが原因です。内科医は、こうした全身の状態を総合的に診て、適切なアドバイスをしてくれるため、安心して相談することができます。また、高血圧や糖尿病といった、他の持病で、もともと内科に通院している方にとっては、わざわざ別のクリニックへ行く手間が省け、いつもの診察の際に、花粉症の薬も一緒に処方してもらえるという、大きなメリットがあります。ただし、内科での治療は、主に内服薬による対症療法が中心となります。もし、内服薬だけでは、鼻づまりや目のかゆみといった局所の症状が、どうしてもコントロールできない場合や、より専門的な治療(レーザー治療や免疫療法など)を希望する場合には、内科医から、耳鼻咽喉科やアレルギー科、眼科といった、専門の診療科へ紹介してもらうことになります。このように、かかりつけの内科は、花粉症診療の入り口として、そして、必要に応じて専門医への橋渡し役として、非常に頼りになる存在なのです。

  • 指がパンパンに腫れる蜂窩織炎の怖さ

    医療

    最初は、小さな傷や虫刺されだったはずなのに、その周りから、熱を持った赤い腫れが、じわじわと広範囲に広がっていく。指全体が、あるいは手の甲までが、パンパンに腫れ上がり、強い痛みを伴う。このような症状は、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」の可能性があります。蜂窩織炎は、ひょう疽のように、膿が特定の場所に溜まるのではなく、皮膚の深い層である「皮下組織」に、細菌が広範囲にわたって侵入し、炎症を起こす病気です。原因となる細菌は、主に黄色ブドウ球菌や連鎖球菌で、皮膚のバリア機能が低下した、小さな傷口から侵入します。蜂窩織炎の特徴は、炎症の境界が比較的はっきりせず、赤みと腫れ、そして熱感(触ると熱い感じ)が、だんだんと広がっていく点にあります。指に発症した場合、指がソーセージのように腫れ上がり、曲げ伸ばしが困難になります。また、皮膚の感染症でありながら、発熱や悪寒、全身の倦怠感といった、全身症状を伴うことも少なくありません。これは、細菌が、皮下のリンパ管や血管を通じて、体内に影響を及ぼし始めているサインであり、注意が必要です。このような蜂窩織炎が疑われる場合、受診すべき診療科は、「皮膚科」です。しかし、高熱が出ている、あるいは腫れや痛みが非常に激しいといった、重症の場合は、入院設備のある総合病院の皮膚科や、場合によっては「形成外科」「感染症科」での治療が必要となることもあります。治療の基本は、原因となっている細菌に対する「抗菌薬(抗生物質)」の投与です。軽症であれば、内服薬で治療が可能ですが、症状が重い場合や、急速に悪化している場合には、入院して、点滴による強力な抗菌薬治療が行われます。また、患部を安静にし、心臓より高く挙げておく(挙上)ことも、腫れや痛みを和らげるために重要です。蜂窩織炎で最も怖いのは、適切な治療が遅れることで、細菌が血液中に入り込み、全身に回ってしまう「敗血症」という、命に関わる状態に陥るリスクがあることです。また、皮下に膿が溜まる「膿瘍」を形成した場合には、切開して膿を出す処置が必要になります。指の腫れが、ただの腫れではなく、広範囲に広がっていると感じたら、決して軽視せず、速やかに医療機関を受診してください。

  • 水虫で皮膚科へ、私の少し恥ずかしかった体験

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    長年、私は、自分の右足の小指の間に、小さな秘密を抱えていました。夏になると、じゅくじゅくして皮がむけ、たまらなくかゆくなる。冬になると、少しマシになる。それを、毎年、繰り返していました。見て見ぬふりをし、市販のかゆみ止めを塗ってごまかす日々。「きっと、水虫だろうな」と、薄々感づいてはいましたが、「病院へ行くのは恥ずかしい」という気持ちが、どうしても勝ってしまっていました。しかし、去年の夏、その症状は、足の裏全体に広がり、かゆみは、仕事に集中できないほど、ひどくなりました。夜も、足の裏の熱っぽさとかゆみで、目が覚めてしまうほどです。もう、限界だ。私は、ついに観念し、近所の皮膚科のドアを叩く決心をしました。予約の日、待合室で待っている間も、私の心臓は、ドキドキと高鳴っていました。「足を診せるのが恥ずかしい」「臭かったらどうしよう」。そんな、くだらない心配ばかりが、頭をよぎります。やがて、名前を呼ばれ、診察室へ。優しそうな女性の医師に、私は、おそるおそる、自分の足を見せました。そして、長年の悩みを、ぽつりぽつりと話し始めました。医師は、私の足をじっと見た後、「顕微鏡で、菌がいるか見てみましょうね」と言って、足の裏の皮を、ピンセットで、ほんの少しだけ採取しました。痛みは全くありません。数分後、再び診察室に呼ばれると、医師は、顕微鏡のモニターを指さしました。「ここに、糸みたいに見えるのが、水虫の菌、白癬菌ですよ。しっかりいますね」。そこには、教科書で見たような、カビの菌糸が、はっきりと映っていました。恥ずかしさよりも、「やっぱりそうだったのか」という、妙な納得感と、原因がはっきりしたことへの安堵感の方が、大きかったのを覚えています。その日から、処方された抗真菌薬を、毎日、お風呂上がりに、丁寧に塗り続けました。すると、あれだけ私を悩ませていたかゆみは、1週間ほどで、嘘のように治まり、2ヶ月も経つ頃には、足の裏は、見違えるほどきれいになりました。今、私が思うのは、「なんでもっと早く来なかったんだろう」という、後悔の念です。恥ずかしさという、ほんの少しのハードルを越えれば、専門家の助けで、長年の悩みから、こんなにもあっさりと解放されるのです。もし、かつての私のように、一人で悩んでいる方がいるなら、ぜひ、勇気を出して、皮膚科を訪ねてみてほしいと、心から思います。

  • かゆみが消えても油断禁物、水虫治療の基本

    医療

    皮膚科で水虫と診断され、抗真菌薬の塗り薬を処方された。毎日、真面目に薬を塗っていると、あれほどひどかったかゆみや、皮むけが、数週間で、目に見えて改善してきた。もう、見た目もきれいになったし、かゆみもないから、治療は終わりにして良いだろう。このように、自己判断で、薬の使用を途中でやめてしまう方が、実は、非常に多くいらっしゃいます。しかし、これこそが、水虫がなかなか治らず、毎年、再発を繰り返してしまう、最大の原因なのです。水虫治療において、最も重要な基本は、「症状が消えても、すぐに薬をやめないこと」です。なぜなら、かゆみや皮むけといった、目に見える症状がなくなったとしても、皮膚の角質層の奥深くには、白癬菌が、まだしぶとく生き残っている可能性が高いからです。白癬菌は、角質層の一番外側で活発に活動し、かゆみなどの症状を引き起こしますが、一部は、より深い層で、休眠状態のように、じっと潜んでいます。ここで薬をやめてしまうと、生き残っていた菌が、再び増殖を始め、しばらくすると、また同じ場所に、水虫が再発してしまうのです。この、見せかけの治癒に騙されず、菌を完全に根絶やしにするためには、医師から指示された期間、根気よく薬を塗り続けることが不可欠です。皮膚の角質層は、新陳代謝によって、約1ヶ月かけて、新しい細胞に入れ替わります。そのため、一般的には、見た目がきれいになってから、さらに最低でも1ヶ月間は、薬を塗り続ける必要があるとされています。また、薬の塗り方にもコツがあります。症状が出ている部分だけでなく、その周囲、そして、症状が出ていないように見える、足の裏全体や、指の間、かかとまで、広範囲に塗ることが推奨されます。白癬菌は、自覚症状のない場所にも、潜んでいることが多いからです。お風呂上がりの、皮膚が清潔で、柔らかくなっている時に塗るのが、最も効果的です。水虫治療は、根気との戦いです。かゆみが消えても、決して油断せず、「もう一息」の気持ちで、治療を最後までやり遂げることが、水虫との完全な決別に繋がるのです。