指先のささくれや、紙で切った小さな傷。日常生活で、このような些細な傷ができることは、避けられないものです。しかし、この小さな傷が、ひょう疽や蜂窩織炎といった、つらい細菌感染症の入り口になってしまうことがあります。ばい菌の侵入を防ぎ、指の腫れや痛みを未然に防ぐためには、傷ができた時の「最初の処置(ファーストエイド)」が、非常に重要になります。まず、傷ができたら、最初にすべきことは「洗浄」です。傷口を、清潔な水道水で、ためらわずに、しかし優しく、十分に洗い流してください。石鹸を使っても構いませんが、その際は、よく泡立てて、傷口をこすらないように、泡で汚れを浮かせるようなイメージで洗い、その後、しっかりとすすぎ流しましょう。この洗浄によって、傷口に付着した、目に見えない細菌や汚れの大部分を取り除くことができます。消毒液(マキロンなど)を使うべきか迷う方も多いと思いますが、最近の考え方では、必ずしも必要とはされていません。消毒液は、細菌を殺すと同時に、傷を治そうとする正常な細胞にもダメージを与えてしまう可能性があるためです。基本的には、水道水による十分な洗浄で、消毒の代わりになると考えてください。次に、傷口を「保護」します。ここで重要なのが、「傷口を乾燥させない」ということです。かつては、傷を乾かして、かさぶたを作ることが良いとされていましたが、現在では、傷口を適度な湿潤環境に保つことで、皮膚の再生が促され、傷が早く、きれいに治ることが分かっています。これを「湿潤療法(モイストヒーリング)」と呼びます。薬局などで市販されている、ハイドロコロイド素材の絆創膏(キズパワーパッドなど)は、この湿潤療法を目的としたものです。傷口から出る滲出液を吸収・保持し、最適な湿潤環境を作り出してくれます。ただし、すでに感染を起こして、赤く腫れていたり、膿が出ていたりする傷には、使用してはいけません。細菌を閉じ込めてしまい、かえって悪化させる危険性があります。もし、傷口の周りが赤く腫れてきたり、ズキズキとした痛みが出てきたりした場合は、それは感染を起こしたサインです。セルフケアを中止し、速やかに皮膚科などの医療機関を受診してください。
指をばい菌から守る、正しい傷の処置