風邪やインフルエンザといった呼吸器感染症にかかった後、熱も下がり、他の症状はだいぶ良くなったのに、咳だけがいつまでもスッキリと治まらず、時には微熱もだらだらと続いてしまう…。このような状態は、「感染後咳嗽(かんせんごがいそう)」の可能性があります。感染後咳嗽は、呼吸器感染症(主にウイルス感染だが、細菌感染の場合もある)が治癒した後も、咳だけが三週間以上、長い場合は数ヶ月程度続いてしまう状態を指します。微熱を伴うことも少なくありません。この場合、すでに原因となったウイルスや細菌は体内から排除されているか、活動性が低下しているため、抗生物質(抗菌薬)などを追加で服用しても、咳や微熱の改善効果は期待できません。感染後咳嗽が起こるメカニズムは、まだ完全には解明されていませんが、感染によって気道の粘膜がダメージを受け、炎症が遷延していたり、気道が過敏な状態(気道過敏性)になったりすることが原因と考えられています。気道が過敏になると、わずかな刺激(例えば、冷たい空気、タバコの煙、ホコリ、会話、笑い声、あるいは気圧の変化など)でも咳反射が起こりやすくなり、咳が長引いてしまうのです。また、炎症が残っていると、それが微熱の原因となることもあります。痰が絡むこともあれば、乾いた咳が続くこともあり、咳の性質は様々です。感染後咳嗽の治療は、主に咳の症状を和らげる対症療法が中心となります。咳止め(鎮咳薬)や去痰薬、気管支拡張薬などが用いられることがあります。また、気道の過敏性を抑えるために、吸入ステロイド薬が処方されることもあります。日常生活では、咳を誘発するような刺激を避けることが大切です。マスクを着用して冷たい空気や乾燥した空気の吸入を防いだり、室内の湿度を適切に保ったり、禁煙をしたりといった工夫が有効です。十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけ、体力を回復させることも重要です。感染後咳嗽は、多くの場合、時間とともに自然に軽快していきますが、症状が非常につらい場合や、日常生活に支JRをきたす場合は、我慢せずに医療機関(呼吸器内科など)を受診し、適切なアドバイスと治療を受けるようにしましょう。