「なんだか体がだるくて、微熱と咳がずっと続いている…」そんな経験はありませんか。特に大人になってからの長引く微熱と咳は、単なる風邪の治りかけと片付けてしまうには注意が必要な場合もあります。その背景には、様々な原因が潜んでいる可能性があるのです。まず、最も一般的なのは、やはり風邪やインフルエンザといったウイルス感染症の治りかけの症状、いわゆる「感染後咳嗽(かんせんごがいそう)」です。ウイルスそのものは体から排除されても、気道の粘膜がダメージを受け、炎症が残っていたり、気道が過敏な状態(気道過敏性)になったりすることで、咳が長引き、微熱がだらだらと続くことがあります。次に、注意が必要なのが「マイコプラズマ肺炎」や「百日咳」といった、一般的な風邪とは異なる細菌感染症です。これらの感染症は、乾いた頑固な咳と、微熱から高熱までの発熱が特徴で、症状が数週間から数ヶ月にわたって続くことがあります。通常の風邪薬や、一般的な抗生物質(抗菌薬)では効果が得られにくいこともあります。また、「咳喘息(せきぜんそく)」や「アトピー咳嗽(がいそう)」といったアレルギー性の疾患も、熱はあまり出ないか、出ても微熱程度で、咳だけが長期間続く原因となります。特に、夜間や早朝、あるいは特定の刺激(冷たい空気、タバコの煙、会話など)で咳が悪化する場合は、これらの可能性を考える必要があります。さらに、副鼻腔炎(蓄膿症)による「後鼻漏(こうびろう)」も、鼻水が喉に落ちることで気道を刺激し、痰がらみの咳や微熱を引き起こすことがあります。その他、稀ではありますが、結核や肺がん、間質性肺炎といった重篤な呼吸器疾患の初期症状として、微熱と咳が続くこともあります。また、膠原病や甲状腺機能異常症といった全身性の疾患の一部として、これらの症状が現れることも否定できません。このように、大人の長引く微熱と咳の原因は多岐にわたるため、自己判断せずに、症状が2週間以上続く場合は、医療機関を受診し、原因を特定してもらうことが大切です。