まるで昨日のことのように思い出せる。あれは、冬の寒さが身に染みるある朝のことだった。ベッドから起き上がり、フローリングに足をついた瞬間、ズキンと激しい痛みがかかとを襲ったのだ。あまりの痛みに、思わず声が出たのを覚えている。「どうしたの?」と妻が心配そうに尋ねる声が、遠く聞こえた。それまでの人生で、かかとが痛むなどという経験は一度もなかった。普段からフットサルを趣味にしており、体力には自信があったはずなのに、その日は普通に歩くことさえままならなかった。痛みは、朝起きて最初の一歩が最も強く、しばらく歩いていると少しずつ和らいでいく。しかし、日中に活動量が増えたり、長く立ち続けたりすると、再び鈍い痛みがぶり返してくるのだ。特に、スポーツをしている最中ではなく、なぜか活動していない時に痛みが出るのが不思議でならなかった。フットサル仲間にも相談してみたが、皆一様に「歳じゃない?」と笑うばかりで、具体的なアドバイスは得られなかった。結局、インターネットで「かかと 歩くと痛い 急に」というキーワードで検索をかける毎日が始まった。検索結果で目にしたのは、「足底筋膜炎」という聞き慣れない病名だった。自分の症状と照らし合わせると、まさにドンピシャで当てはまる。足の裏の筋肉が炎症を起こしている、という解説を読み、今までいかに自分の足に負担をかけてきたかを思い知らされた。フットサル中は、いつもスパイクに頼りきりで、練習後のケアはほとんどしていなかった。思えば、普段履いている革靴も、クッション性には乏しく、かかとへの衝撃は相当なものだったに違いない。妻からは「もう若くないんだから無理しないでね」と釘を刺され、少しばかり落ち込んだ。痛みを放置しておくわけにはいかない。まずは、出来ることから始めようと決意した。まず、ランニングシューズを新調した。これまでデザイン重視で選んでいたが、今回はクッション性とサポート性を最優先した。普段履きの靴も、スニーカーを積極的に取り入れることにした。また、毎晩お風呂上がりに、足裏のストレッチとアキレス腱のストレッチを念入りに行うようになった。特に、足裏のアーチを意識したマッサージは、痛みの軽減に効果があるように感じられた。フットサルは一時的に中断し、しばらくはウォーキングに切り替えることにした。