病院警備の専門家に、いかにして広大な施設内の死角をなくし、安全なカメラ配置を実現しているのかという基準について話を聞きました。プロの視点では、カメラの設置場所を決める際に最も重視するのは「動線の交差点」だと言います。玄関、エレベーターホール、階段室、そして各病棟へ繋がる通路の合流点。これらの場所にカメラを置くことで、人の流れを途切れることなく追跡することが可能になります。また、病院特有の死角として注意を払うのが、リネン室や清掃用具入れが並ぶ奥まった廊下や、地下の資材搬入口です。こうした場所は人通りが少なく、犯罪の温床になりやすいため、広角レンズを搭載したカメラを天井の高い位置に設置し、俯瞰して監視する手法が取られます。さらに、最近の課題として挙げられるのが「車椅子の目線」での死角です。大人の立位では見えていても、座った状態では看板や棚に隠れて見えない場所が発生します。そのため、カメラの設置高さも一定ではなく、低い位置をカバーするための補助カメラを組み合わせることが推奨されています。警備のプロが指摘するのは、カメラの存在をあえて見せる「抑止効果」と、目立たないように配置する「実利」の使い分けです。正面玄関などでは存在感を出すことで犯罪を未然に防ぎ、一方で静かな病棟などではドーム型の目立たないカメラを採用して患者さんの心理的負担を軽減します。どこにカメラを置くかという判断には、単なる防犯以上の、医療現場ならではのホスピタリティと緻密な計算が隠されています。万全のセキュリティとは、監視されていることを意識させないほど自然でありながら、すべての死角を網羅している状態を指すのです。