医療保険制度や診療報酬のチェックポイント解説

2025年8月
  • 赤ちゃんのものもらい、切開は必要?

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    赤ちゃんがものもらい(麦粒腫)になり、まぶたがパンパンに腫れ上がり、膿が溜まっているのが見える。そんな時、保護者の方は、「この膿は、切って出さなければ治らないのだろうか」「赤ちゃんに切開なんて、痛くてかわいそう」と、大きな不安を感じることでしょう。結論から言うと、赤ちゃんのものもらいで、「切開排膿(せっかいはいのう)」という、まぶたを切って膿を出す処置が必要になるケースは、それほど多くはありません。ほとんどの赤ちゃんのものもらいは、抗菌薬の点眼や軟膏といった、保存的な薬物療法で、自然に改善していきます。赤ちゃんは、新陳代謝が活発で、組織の修復能力も高いため、薬で細菌の増殖を抑えてあげれば、膿は自然に吸収されたり、あるいは、皮膚が薄い部分から、自然に破れて排出されたりして、治癒に向かうことがほとんどです。そのため、医師も、まずは薬物療法を基本とし、できるだけ切開をせずに治す方向で、治療を進めるのが一般的です。しかし、中には、どうしても切開が必要となるケースも存在します。例えば、膿の量が非常に多く、まぶたが極度に腫れ上がって、痛みも非常に強く、赤ちゃんが哺乳もできないほど、ぐったりしてしまっている場合。あるいは、薬物療法を続けても、一向に改善の兆しが見られない、難治性の場合などです。このような状況では、膿による圧力が、強い痛みの原因となっているため、切開して膿を排出することで、症状を速やかに和らげ、治癒を早めることができるのです。もし、切開が必要と判断された場合でも、過度に心配する必要はありません。医師は、赤ちゃんへの負担が最小限になるように、細心の注意を払って処置を行います。多くの場合、赤ちゃんをバスタオルなどで優しく包んで、動かないように安全を確保し、点眼麻酔などを用いて、痛みをできるだけ感じないように配慮した上で、ごく短時間で処置を終えます。もちろん、切開という選択肢が提示されれば、保護者として不安に思うのは当然です。その際は、なぜ切開が必要なのか、処置の方法や、その後の経過について、納得できるまで医師に質問し、説明を受けることが大切です。医師と保護者が、しっかりと連携し、赤ちゃんにとって最善の治療法を選択していくことが、何よりも重要です。

  • 狭心症の診断、病院ではどんな検査をする?

    医療

    胸の痛みや圧迫感で循環器内科を受診し、狭心症が疑われた場合、その診断を確定させ、治療方針を決めるために、いくつかの専門的な検査が段階的に行われます。これらの検査は、心臓の状態を様々な角度から評価し、病気の重症度を正確に把握するために不可欠です。まず、どの患者さんにも必ず行われるのが、基本となる「安静時心電図検査」と「胸部X線検査」です。心電図は、心臓の電気的な活動を記録し、不整脈や、心筋虚血(心臓の筋肉の血流不足)の兆候がないかを調べます。X線検査では、心臓の大きさや形、肺に水が溜まっていないか(心不全の兆候)などを確認します。しかし、労作性狭心症の場合、安静にしている時には、これらの検査で異常が見られないことがほとんどです。そのため、次に重要となるのが、心臓に負荷をかけた時の状態を調べる「負荷心電図検査」です。ベルトコンベアの上を歩く「トレッドミル検査」や、固定された自転車を漕ぐ「エルゴメーター検査」などがあり、運動中に心電図の変化や、胸の症状が現れるかどうかを確認します。これらの検査で、狭心症が強く疑われた場合、さらに詳しい情報を得るために、「心エコー(超音波)検査」が行われます。超音波を使って、心臓の壁の動きや、弁の状態、ポンプ機能などをリアルタイムで観察することができます。安静時だけでなく、薬や運動で負荷をかけた状態での心臓の壁の動きの変化を見る「負荷心エコー検査」も、診断に非常に有用です。そして、冠動脈の状態をより直接的に評価するための検査として、「冠動脈CT検査」があります。造影剤を腕から注射し、CTスキャンを撮影することで、冠動脈のどの部分が、どの程度狭くなっているのかを、立体的な画像で詳細に把握することができます。これらの検査で、重度の狭窄が見つかったり、診断が確定しなかったりした場合には、最終的な診断と治療を兼ねて、「心臓カテーテル検査」が行われます。これは、カテーテルを心臓の冠動脈まで進め、直接、造影剤を注入して、血管の狭窄の様子を動画で撮影する、最も精密な検査です。必要であれば、検査に引き続き、そのままカテーテル治療(ステント留置など)に移行することもあります。

  • 手足口病の時にお風呂は入っても良いのか

    知識

    子どもが手足口病にかかった時、多くの保護者が悩むのが「お風呂に入れても良いのだろうか」という問題です。高熱や全身の発疹を目の当たりにすると、入浴させることで症状が悪化したり、体力を消耗させたりするのではないかと心配になるのは当然のことでしょう。しかし、結論から言えば、手足口病の時でも、いくつかの注意点を守ればお風呂に入ることは全く問題ありません。むしろ、皮膚を清潔に保つために、入浴は推奨されるべきケアの一つです。手足口病の主な症状は、その名の通り、手、足、口の中にできる水疱性の発疹です。特に、お尻や膝などにも発疹が広がることがあり、汗や汚れが溜まりやすい場所でもあります。これらの発疹を掻き壊してしまうと、そこから細菌が侵入して二次感染(とびひなど)を起こすリスクがあります。そのため、シャワーやお風呂で汗や汚れを優しく洗い流し、皮膚を清潔な状態に保つことは、二次感染の予防という観点から非常に重要です。では、どのような状態であれば入浴が可能なのでしょうか。まず、最も重要な判断基準は、子どもの全身状態です。高熱が出ていてぐったりしている時や、食欲がなく元気がない時は、体力を消耗させてしまうため、入浴は避けるべきです。熱いお湯で体を拭いてあげる程度に留めましょう。一方、熱が下がってきていて、比較的機嫌が良く、元気がある状態であれば、入浴させても問題ありません。ただし、長湯は禁物です。体力の消耗を避けるため、ぬるめのお湯で、短時間で済ませることを心がけてください。お湯の温度は38~39度程度が目安です。体を洗う際は、石鹸をよく泡立てて、ゴシゴシ擦るのではなく、泡で優しく撫でるように洗いましょう。特に、水疱がある部分は、潰さないように細心の注意が必要です。入浴後は、清潔なタオルで、これも擦らずに、ポンポンと優しく押さえるように水分を拭き取ります。手足口病だからといって、特別なお風呂の入り方が必要なのではなく、普段以上に「優しく、清潔に」を心がけることが、快適な療養と合併症の予防に繋がるのです。

  • 赤ちゃんの「ものもらい」と「霰粒腫」の違い

    医療

    赤ちゃんのまぶたに、ぷくっとした「しこり」ができた時、それは、いわゆる「ものもらい」かもしれませんが、よく似た別の病気である「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」の可能性もあります。この二つは、見た目が似ているため混同されがちですが、その原因と症状、そして治療法が異なります。その違いを理解しておくことは、保護者の方が、落ち着いて対処するために役立ちます。まず、「ものもらい」、医学的には「麦粒腫」の原因は、「細菌感染」です。まぶたにある汗腺や、脂を出すマイボーム腺に、黄色ブドウ球菌などの細菌が感染し、急性の化膿性炎症を引き起こした状態です。そのため、症状としては、「赤み」「腫れ」「痛み」といった、急性の炎症反応が強く現れるのが特徴です。赤ちゃんは、痛みから機嫌が悪くなったり、しきりに目をこすったりします。症状は、比較的短い期間でピークに達し、膿が溜まって、白や黄色の膿点が見られることもあります。一方、「霰粒腫」の原因は、「非感染性の炎症」です。これは、細菌感染を伴わず、単純に、脂を出すマイボーム腺の出口が、何らかの理由で詰まってしまい、分泌されるはずだった脂が、腺の中に溜まって、しこり(肉芽腫という塊)を形成した状態です。言ってみれば、まぶたにできた、脂肪の塊のようなものです。そのため、麦粒腫のような、急激な痛みや強い赤みを伴うことは少なく、主な症状は、「まぶたのしこり」や、ゴロゴロとした「異物感」です。しこりは、時間をかけてゆっくりと大きくなることが多く、痛みがないため、赤ちゃん自身は、あまり気にしていないように見えることもあります。ただし、この霰粒腫に、後から細菌が二次感染すると、「化膿性霰粒腫」となり、麦粒腫と非常によく似た、痛みや赤みを伴う炎症症状が現れるため、鑑別が難しくなります。まとめると、ものもらい(麦粒腫)は、「痛い、急性の細菌感染」、霰粒腫は、「痛くないことが多い、慢性の詰まり」。この根本的な原因の違いを、医師は診察で見極め、それぞれに適した治療法を選択します。保護者の方は、自己判断せず、専門医の診断を仰ぎましょう。

  • 赤ちゃんのものもらい、目薬のさし方のコツ

    知識

    小児科や眼科で、赤ちゃんのものもらいと診断され、抗菌薬の点眼薬(目薬)を処方された。しかし、いざ、家でさそうとすると、赤ちゃんが顔を背けて大泣きしたり、暴れてしまったりして、なかなかうまくいかない。そんな経験を持つ保護者の方は、非常に多いことでしょう。動いて嫌がる赤ちゃんに、正確に目薬をさすのは、至難の業です。しかし、いくつかのコツを知っておくことで、保護者の負担を減らし、赤ちゃんへのストレスも最小限に抑えながら、効果的に点眼することができます。まず、準備段階として、点眼の前に、必ず自分の手を石鹸でよく洗い、清潔にしておきましょう。そして、処方された点眼薬が、冷蔵庫保存のものか、室温保存のものかを確認し、使用期限もチェックします。冷蔵庫から出したばかりの冷たい目薬は、赤ちゃんをびっくりさせてしまうため、容器ごと、清潔な手で数分間握りしめ、人肌程度に温めておくと、刺激が和らぎます。次に、実際のさし方です。一人で苦戦するよりも、可能であれば、家族に協力してもらい、二人で行うのが最も確実です。一人が、赤ちゃんの体を優しく、しかし、しっかりと抱きかかえるか、バスタオルなどで体をくるんで動きを少し制限します。そして、もう一人が、点眼を担当します。点眼する人は、赤ちゃんの頭側に回り込み、利き手ではない方で、赤ちゃんの顎を優しく支え、顔を上向きに固定します。そして、利き手に点眼薬を持ち、その手の小指側(小指球)を、赤ちゃんの額や眉間のあたりにそっと置きます。こうすることで、手が安定し、万が一、赤ちゃんが急に動いても、容器の先が目に刺さってしまう危険を防ぐことができます。そして、利き手ではない方の親指で、下まぶたを軽く下に引いて、「あっかんべー」の状態を作ります。そこに、狙いを定めて、確実に1滴、薬を落とします。もし、赤ちゃんが強く目をつぶってしまって、うまくさせない場合は、無理にこじ開けようとせず、目頭のあたりに1滴落とすだけでも大丈夫です。その後、赤ちゃんが目を開けた瞬間に、薬は自然と目の中へ流れ込んでいきます。点眼後は、あふれた薬液を、清潔なティッシュで優しく拭き取り、たくさん褒めてあげましょう。嫌がるからと諦めず、治療のために必要なことだと割り切り、手早く、そして愛情を持って、根気よく続けてあげてください。

  • 赤ちゃんのものもらい、人にうつるの?

    知識

    赤ちゃんのまぶたが赤く腫れ、ものもらい(麦粒腫)と診断された時、保護者の方が心配になることの一つに、「この病気は、他の家族や、保育園のお友達にうつるのだろうか」という疑問があるでしょう。結論から言うと、通常の「ものもらい」は、インフルエンザや、はやり目(流行性角結膜炎)のように、空気感染や飛沫感染で、次から次へと人にうつっていくような、強い伝染力を持つ病気ではありません。ものもらいの原因は、主に、私たちの皮膚や鼻の奥などに普段から存在している「常在菌」(黄色ブドウ球菌など)です。これらの菌が、何らかのきっかけで、まぶたの分泌腺に侵入し、感染・炎症を起こすことで発症します。つまり、外から特殊な病原体をもらってくるわけではなく、基本的には、自分自身が持っている菌によって引き起こされる、内因性の感染症なのです。したがって、ものもらいになった赤ちゃんと、普通に接しているだけで、他の人にうつる心配は、ほとんどありません。保育園や幼稚園も、基本的には、休む必要はないとされています。ただし、「うつる可能性はゼロではない」という点には、注意が必要です。ものもらいによって生じた膿の中には、原因となっている細菌が、大量に含まれています。もし、赤ちゃんが、膿が出ている目をこすり、その手で、他の人の目に触れたり、あるいは、ウイルスが付着したタオルを共有したりした場合には、接触によって、細菌が他の人の目に運ばれてしまう可能性はあります。特に、相手が、同じように免疫力の低い、別の赤ちゃんや、高齢者である場合は、感染が成立してしまうリスクも考えられます。そのため、家庭内での感染を防ぐためには、いくつかの基本的な衛生管理を徹底することが大切です。感染している赤ちゃんの世話をした後は、必ず石鹸で手をよく洗うこと。赤ちゃんが使用したタオルや、顔を拭いたガーゼなどは、他の家族とは別のものを使用し、こまめに洗濯すること。そして、赤ちゃん自身にも、できるだけ目をこすらせないように気をつけてあげましょう。ものもらいは、過度に恐れる必要はありませんが、正しい知識を持ち、適切な衛生対策を講じることが、家族みんなの健康を守ることに繋がります。

  • 若い女性でも要注意!炎症性腸疾患という可能性

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    血便と聞くと、多くの人は痔や大腸がんを思い浮かべるかもしれませんが、特に10代後半から30代の若い女性で、腹痛や下痢を伴う血便が続く場合、もう一つ念頭に置かなければならない病気があります。それが、「炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)」です。炎症性腸疾患は、原因不明の慢性的な腸の炎症を特徴とする病気の総称で、代表的なものに「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」があります。これらの病気は、かつては欧米に多いとされていましたが、近年、日本でも食生活の欧米化などを背景に、患者数が著しく増加しており、決して稀な病気ではありません。まず、「潰瘍性大腸炎」は、主に大腸の粘膜に炎症が起こり、びらん(ただれ)や潰瘍ができる病気です。炎症は直腸から始まり、奥へ奥へと連続的に広がっていくのが特徴です。主な症状は、粘液と血液が混じった「粘血便」と、頻繁に便意を催す「しぶり腹」、そして下痢です。重症化すると、発熱や体重減少、貧血などを伴うこともあります。一方、「クローン病」は、口から肛門までの消化管のあらゆる場所に、非連続的な炎症や潰瘍が生じる可能性のある病気です。小腸や大腸が好発部位ですが、潰瘍が消化管の壁の深いところまで達する(深掘れ潰瘍)のが特徴で、腸に穴が開いたり(穿孔)、腸管同士が癒着してトンネルができたり(瘻孔)といった、複雑な病変を形成することがあります。主な症状は、腹痛、下痢、体重減少、発熱などで、血便は潰瘍性大腸炎ほど顕著ではない場合もあります。これらの炎症性腸疾患は、国の難病に指定されており、残念ながら現時点では根治させる治療法はありません。しかし、適切な薬物療法(5-ASA製剤、ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤など)によって、炎症をコントロールし、症状のない「寛解」という状態を長期間維持することは十分に可能です。若い女性が、なかなか治らない腹痛や下痢、血便に悩んでいる場合、「若いから大丈夫」と過信せず、必ず消化器内科を受診し、大腸カメラなどの精密検査を受けることが、早期診断と適切な治療への第一歩となります。

  • 女性の狭心症、見逃されやすい非典型的な症状

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    狭心症の典型的な症状といえば、「胸が締め付けられるような痛み」ですが、特に女性の場合、このような典型的な症状が現れず、一見すると心臓とは関係ないような、「非典型的な症状」として発症することが少なくありません。このことが、診断の遅れに繋がり、見過ごされているうちに病気が進行してしまう危険性があるため、女性ならではの症状のサインを知っておくことが非常に重要です。女性の狭心症でよく見られる非典型的な症状として、まず挙げられるのが、胸の痛みではなく、「放散痛」が主体となるケースです。胸はそれほど痛くないのに、左肩や背中、あるいは両肩の凝り、顎や歯の痛み、みぞおちの不快感(胃痛と間違われることもあります)といった症状が、体を動かした時に現れ、休むと楽になる、というパターンです。これらは、心臓の痛みを伝える神経が、他の部位の神経と合流しているために起こる関連痛であり、心臓からのSOSサインである可能性があります。また、はっきりとした痛みではなく、「胸の圧迫感」や「息苦しさ」、「動悸」といった、曖昧な症状として感じられることもあります。特に、精神的なストレスが引き金となって発症する、微小血管狭心症というタイプの狭心症は、女性に多いとされており、こうした非典型的な症状を呈することが多いと言われています。さらに、「原因不明の極度の疲労感」も、見逃してはならないサインです。これまで普通にできていた家事や買い物をしただけで、ひどく疲れてしまい、動けなくなるといった症状が、実は心筋への血流不足によって引き起こされていることもあるのです。なぜ、女性は非典型的な症状が多いのでしょうか。その理由は、まだ完全には解明されていませんが、女性ホルモンの影響や、男性に比べて心臓の血管が細いこと、痛みの感じ方の性差などが関係しているのではないかと考えられています。大切なのは、「狭心症の痛みは、必ずしも胸だけとは限らない」と知っておくことです。もし、あなたが、特に更年期以降の女性で、体を動かした時に決まって現れる、原因不明の肩こりや顎の痛み、息切れ、疲労感などに悩んでいるなら、一度、循環器内科で相談してみることをお勧めします。

  • 花粉症シーズン前の受診、その重要性

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    毎年、春になると、ティッシュが手放せない、つらい日々を送っている。そんな花粉症に悩む多くの方に、ぜひ実践していただきたいのが、「症状が出る前」、すなわち、花粉が本格的に飛散し始める前の、早期受診です。これは、「初期療法」と呼ばれ、シーズン中の症状を、格段に軽く抑えるための、最も効果的な戦略の一つです。花粉症の症状は、体内に花粉(アレルゲン)が侵入し、アレルギー反応の主役であるヒスタミンなどの化学伝達物質が、体内で大量に放出されることで引き起こされます。そして、一度、強い症状が出てしまうと、鼻や目の粘膜は、非常に過敏な状態になり、ほんの少しの花粉にも、過剰に反応するようになってしまいます。こうなると、薬を飲んでも、なかなか症状が治まらず、つらい状態が長引くことになります。初期療法は、この悪循環を断ち切るための治療法です。花粉が飛び始める2週間ほど前、あるいは、症状がまだごく軽いうちに、医療機関(耳鼻咽喉科、アレルギー科、眼科など)を受診し、抗アレルギー薬の服用や点眼を開始します。これにより、本格的な飛散シーズンを迎える前に、あらかじめ、アレルギー反応が起きにくい体の状態を作っておくのです。たとえるなら、火事が大きくなってから消火活動を始めるのではなく、小さな火種のうちに、あるいは火事が起きる前から、防火対策を徹底しておくようなものです。この初期療法を行うことで、シーズン中の症状のピークを、大幅に低く抑えることができ、症状が現れる期間も短縮できることが、多くの研究で証明されています。また、使用する薬の全体量を、結果的に減らすことにも繋がります。毎年、スギ花粉症に悩まされている方であれば、天気予報などで、花粉の飛散開始予測日をチェックし、その2週間前、つまり、関東地方であれば、1月の下旬から2月の初旬あたりが、受診の最適なタイミングとなります。毎年、つらい症状に耐えている方は、ぜひ、今年こそ「症状が出る前」の受診を心がけてみてください。その少しの先回りが、春の過ごし方を、劇的に変えてくれるかもしれません。

  • 家族にうつさない!水虫の正しい予防と対策

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    一人暮らしならまだしも、家族と一緒に暮らしている場合、自分が水虫になってしまうと、「家族にうつしてしまうのではないか」という心配が、大きなストレスになります。実際に、水虫は、家庭内での感染が非常に多い病気です。しかし、その感染経路と、白癬菌の性質を正しく理解し、適切な対策を講じることで、家庭内感染のリスクを、大幅に減らすことが可能です。水虫の原因である白癬菌は、感染者の足から剥がれ落ちた、皮膚の角質(垢)の中に潜んでいます。そして、この菌が付着した場所を、他の人が素足で歩き、その足に菌が付着し、さらに、その菌が増殖しやすい「高温多湿」の環境が整った時に、感染が成立します。つまり、家庭内感染を防ぐためのポイントは、「菌をばらまかないこと」「菌に触れないこと」「菌が増殖する環境を作らないこと」の三つです。まず、最も重要な感染源となるのが、「バスマット」です。お風呂上がりの湿った足で踏むバスマットは、白癬菌にとって、まさに天国のような場所です。水虫の人がいる家庭では、バスマットの共用は絶対にやめ、個人用のタオルを使うようにするか、あるいは、バスマット自体を、こまめに洗濯・乾燥させることを徹底しましょう。同様に、「スリッパ」の共用も避けるべきです。次に、家庭でできる基本的な対策として、「こまめな掃除」が挙げられます。床、特に、脱衣所やカーペットなどを、掃除機で丁寧に掃除し、白癬菌の潜む角質を取り除くことが大切です。また、感染者自身が、足を清潔に保つことも重要です。毎日、石鹸をよく泡立てて、足の指の間まで、優しく丁寧に洗いましょう。そして、洗い終わった後は、タオルで水分を完全に拭き取り、乾燥させることが何よりも肝心です。白癬菌は、湿った環境を好むため、足を常に乾燥させておくことが、菌の活動を抑える上で効果的です。これらの対策は、面倒に感じるかもしれませんが、あなたの大切な家族を、水虫の悩みから守るための、愛情表現の一つです。皮膚科で正しい治療を受けながら、家庭内での感染対策も、並行して行っていきましょう。