総合病院の慢性期病棟で勤務する看護師として、私たちが日々行っている入浴介助、特に「機械浴」が患者様にとってどのような体験であるのかを、専門職の視点からお伝えします。寝たきりの患者様や、自力で身体を動かすことが困難な方にとって、お風呂がどんな感じなのかは、生活の質を左右する重大な関心事です。機械浴とは、専用の昇降機やストレッチャー型の搬送車を用いて、患者様をそのまま浴槽内へと導くシステムです。私たちの病棟で使用しているのは、寝たままの姿勢で入る「平浴」タイプです。介助の現場では、まず看護師二名体制で患者様のバイタルサイン、血圧や体温を厳密にチェックすることから始まります。入浴は心臓に負担がかかるため、この判断は一分も疎かにできません。準備が整うと、患者様を専用の布状のシートで包み込み、機械のアームでゆっくりと浮き上がらせます。宙に浮く感覚に不安を覚えないよう、私たちは絶えず「今から少し上がりますよ」「大丈夫ですよ」と声をかけ続け、手をお握りします。そのまま浴槽の上まで移動し、ゆっくりと温かいお湯の中へ沈み込んでいく。この瞬間、多くの患者様の表情が劇的に変わります。強張っていた手足の筋肉が、温熱効果によってふわりと解け、深く長い溜息をつかれる方もいらっしゃいます。言葉でのコミュニケーションが難しい患者様でも、その穏やかな目つきや呼吸の安定から、お風呂の持つ癒やし効果を肌で感じ取ることができます。機械浴の浴室は、常に適切な湿度と温度が保たれており、私たちはその中で患者様の皮膚の異常、例えば小さな発赤や湿疹、むくみの変化などをくまなく観察します。洗浄には、肌への刺激を最小限に抑えた弱酸性の泡を使い、手のひらで包み込むように優しく洗っていきます。機械的な作業に思われがちですが、実際には非常に濃密な対話の時間です。お風呂から上がった後は、全身を丁寧にタオルで押さえて水分を取り、保湿クリームを塗り込みます。この一連のプロセスを終えた患者様は、お肌がしっとりと潤い、非常に安らかな表情で眠りにつかれることが多いです。看護師にとって機械浴の介助は体力的にもハードですが、患者様が人間としての悦びを感じている瞬間に立ち会える、最もやりがいのある業務の一つです。病院のお風呂は、機械という冷たい道具を使いながらも、その中身は最も温かなケアの心が詰まった場所なのです。
看護現場から語る機械浴の役割と実際