ある月曜日の朝、三歳になる息子の着替えを手伝っていたとき、私は彼の足の裏に小さな赤いポツポツを見つけました。その数はわずか三つか四つで、蚊に刺されたにしては場所が不自然で、かといって本人は全く痒がる様子もありません。熱を測っても三十六度六分の平熱。「昨日の公園で何か踏んだのかな」程度に考え、そのまま保育園へ送り出したのが、私の手足口病との最初の出会いでした。その日の午後、保育園から電話があり、先生から「お友達の間で手足口病が流行っています。息子さんの足の発疹が増えてきたようなので、一度受診をお願いします」と告げられました。驚いて迎えに行くと、朝よりも少しだけ赤みが増したかなという程度の足。口の中を覗いても綺麗で、本人はおやつを催促するほど元気いっぱいです。正直なところ、病院へ行くのを迷うほど「どこも悪くない」ように見えました。しかし、近所の小児科を受診し、医師が息子の足と手のひらをライトで照らした瞬間、冷静な声で「手足口病ですね、非常に軽いですが典型的な所見です」と診断されました。医師の説明によれば、今回の流行は比較的症状が軽く出るタイプとのことでしたが、それでも一週間は集団生活を控えるべきだと言われ、私はそこから始まる「元気すぎる病人」との生活に頭を抱えました。翌日も翌々日も、息子は高熱が出ることもなく、喉の痛みで食事を拒むこともありませんでした。それどころか、外に出られないストレスからか、家の中で暴れ回り、私の体力を削っていきます。手にできた小さな発疹も、水ぶくれになることなく、ただの薄いシミのように変化し、三日目にはほとんど消えかかっていました。世間のお母さんたちが、子供の激しい嘔吐や口の中の激痛で一晩中抱っこをして過ごしたという壮絶なエピソードを聞いていた私にとって、この「拍子抜けするほどの軽さ」は、ありがたい反面、どこか不気味でもありました。しかし、医師から言われた「症状が軽くても、ウイルスは便から出続けている」という言葉を思い出し、私は執念深く手洗いを徹底し、タオルの共有を避け、おむつの処理には細心の注意を払いました。私が最も反省したのは、症状が軽いことを理由に「大丈夫だろう」と自己判断し、周囲への配慮を怠りそうになった自分自身の心の甘さです。軽い手足口病は、本人の苦痛が少ない分、親にとっては感染拡大を防ぐという「社会的な試練」になるのだと痛感しました。一週間後、再診で登園許可をもらったとき、医師から「お母さんがしっかり見てくれたから、これだけで済みましたね」と言われ、ようやく肩の荷が下りました。この経験を通して学んだのは、手足口病には「見えないフェーズ」があるということです。見た目が元気でも、身体の中ではウイルスとの静かな戦いが行われており、それを支えるのは親の冷静な観察と、ルールを守る誠実さなのだと、今は強く感じています。